例えば、元彼にあの人を殺される

最近、夜によく眠れない

二時間か三時間の短い睡眠をとって、起きた。

その晩見たのは元彼の夢だった

 

彼との共通の友人と、彼とご飯に行く夢だった

友人に「お前らいつ結婚するんだ」と言われて、笑いあってた。バカみたいに。

 

私と付き合ってた時

彼はそんな風に笑わなかった

 

普通の幸せそうなカップルを見下してるようなところがあったし、

多分カッコつけてクールぶってたところがあったんだと思う。年相応にあんまり笑わなかった。

そのまま寝れなくて朝になる

 

朝5時ごろに無理矢理ご飯を食べてようやく寝ることができた

昼頃に起きて、カーテンを開ける

実は元彼の家はウチから近いし、私の部屋から彼の部屋のベランダが見える

 

ふと、彼に会ってみようと思った。

イケメンはイケメンのまま

家から歩いて少ししたところにある、小さなカフェで会うことになった。

私は少し遅れて行ったけど、やっぱり時間に厳しい彼は先に席についてた。

(別に怒ったりはしなくて、自分でやたらと守ってるだけ)

 

痩せたようだ

 

髪も短く切ってて、ちょっと鋭いイメージが増した。整った顔立ちが少し掘り深くなった気もする。

高校生の頃から随分大人っぽくなったなぁ。

 

じーっと観察してたら

「なに?」

って照れながら笑う

 

ああ、話し方は柔らかくなってる

やっぱり大人になった

私はちょっと置いてけぼりな気分

 

彼は自分の近況について話し出す

大学のこととか、昔馴染みの友達の話とか

私も仕事の話をする

それはいつものことだったんだけど

彼は私の話に興味なさそうに、うんうんと頷くだけ。

 

私の話って大して中身ないから。

唯一彼が興味津々で聞いてきたのは

 

「あの人、と。どうなったの?」

そんなの、ない。

何もない。

てか、なんであの人のこと知ってんだ?話したっけ?

 

あの人とはいろいろあって、会うのが気まずいでも忘れられないし忘れたくない(とは言わなかったけど、多分彼は空気で察した)

彼はそのおっきな綺麗な目で私を見つめる。私昔から君のその、ちゃんと目を見て話すのに弱い

 

 

「じゃあさ、もしあの人が死んだとするじゃん?」

 

………えいや、

ちょっと待って

例え話でもあの人のこと殺さないでよ!

君に触れると泣きたくなる

「じゃあさ、もしあの人が死んだとすんじゃん?お前が何もしないままあの人が死んだら、お前絶対グダグタ後悔して泣くじゃん。振られるよりそっちのが嫌でしょ。」

 

よくそんなこと、一応元カノに言えるなぁ。

あ、あんまり私のこと好きじゃなかったから言えちゃうのかな?

割と納得、それなら。

 

うんだけど、私は彼の意見には同意だし、もし私と同じような状況の人がいたら、同じことアドバイスすると思う。

だけど、怖い。

 

あの人は私の人生の中で絶対的に一番で。親よりも否定されるのが怖い相手なのだ

気持ちを否定されて前に向ける予定なんて微塵も作れそうにない

 

だから私は彼のこの重要な指摘を聞き流す

昔みたいに、同じバイト先で働いてた頃。彼がよく仕事のできない私にアドバイスくれたけど、めんどくさくて聞き流してたみたいに。

 

実際のところ、わかってても私には重要じゃないから

 

彼は私が聞き流すってわかってて、それでもしつこく言ってくる

そうして聞いてないなって呆れて笑う

私が唯一彼の好きだなと思うところ、その笑顔だった。ほんと、最低だと思う。

 

私はまた聞き流す

二人でぼーっと秋の空を眺めながら家に帰る

時々危ないよって手を引いてくれて、懐かしさを感じたけど愛はないことに少し寂しさを感じた

虚ろな頭の中、会話を続けようとなんとなく質問してみた

 

「で、彼女できた?」

「いない」

「ああそう。イケメンなのに勿体ない」

「そう言ってくれる人はいるけど、俺が理屈っぽく話すから嫌だってさ」

「あーそうだね。まぁそんな話し方するよね」

「お前ぐらいだよ、俺のことうまく扱えんの」

「んー面倒なとこは見ないふりしてきたからなぁ」

「…多分それぐらい適当がいいんだと思う。でもみんな、俺のことちゃんと受け止めようとするから。疲れるってさ」

「どんまい」

「……俺お前と別れてから、彼女いないよ」

 

 

その言葉がズンと重く響いた

彼と別れたのは自然消滅だ

 

いつ、彼は別れたと認定したのか

その別れを一人で受け止めたのか

 

申し訳なくて泣きそうになった

けど、私が泣いちゃいけないよね

 

どうして、こんなに素敵な人がいるのに、私はあの人しか愛せないんだろう

だけど少しも後悔してない自分にため息が出る

 

段差につまずいてよろめけば、彼が手を繋いでくれた

あの頃と違って冷たいその手に

私は謝りたくなってしまった。

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